スポーツ外傷

スポーツ外傷のイメージ写真

スポーツ外傷は、スポーツ中に生じた外力に起因する損傷です。
具体的には、切り傷や捻挫、突き指、打撲、脱臼、骨折、靭帯損傷、腱断裂、肉離れなどがあります。
当クリニックでは各種スポーツ外傷について早期に診断をつけ、それぞれの患者様に最適な治療をご提案させて頂いております。
スポーツ活動後に痛みや違和感をお持ちになられたかたは、出来るだけ早めにお問い合わせください。

スポーツ外傷の例

腱板損傷

肩関節の中を走行する、腱板という組織に損傷が生じた状態です。腱板は棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋という4つの筋肉で構成されており、腱板損傷は高齢者ではいわゆる使い痛みとして、70-80代の方の実に50%が何らかの損傷を持っていると考えられております。
右肩に多いことから、肩の使い過ぎが原因の一つであると推測されますが、周りの筋肉が肩関節運動を補助するため、いわゆる使い痛みでは必ずしも手術を要しないケースが多いと考えられます。
一方、スポーツ選手に腱板損傷が場合、パフォーマンスの改善目的に手術治療を要するケースがあります。

膝靭帯損傷(前十字・後十字靭帯、内・外側側副靭帯)

スポーツや交通事故などで膝関節に大きな力が加わり、この組織が部分的または完全に切れてしまった状態です。
急性期症状としては膝が腫れ、痛みと関節を動かせる範囲の制限がみられます。
急性期を過ぎると痛みや腫れ、可動域制限はいずれも軽くなってきますが、特に前十字靭帯は自己再生能力が極めて低く、損傷を認めた場合は手術療法を要するケースが多いです。
早期診断が必要な外傷の代表例です。

半月板損傷

半月板は、膝関節を構成する大腿骨(太ももの骨)と脛骨(脛の骨)の間にあるクッションの役割を果たす軟骨組織です。
内側と外側それぞれにあり、クッションとスタビライザーの役目を果たしています。
ここが損傷すると、膝の曲げ伸ばしの際に痛みや引っ掛かり感を覚えたりします。
悪くすると、膝に水が溜まったり、急に膝が動かなくなり、痛くて歩けなくなったりします。

足関節捻挫

足関節は底背屈を主に行う関節ですが、実際には複雑な動きを行い、また荷重関節でもあり運動時には外力がかかり続ける関節です。
内側は強固な靭帯で固定されていますが、様々な運動で行われるサイドステップ様の動きや、バスケットのリバウンド争いなどで着地時に多選手のバッシュを踏むことなどでいわゆる内がえしの状態が強制され、外側の靭帯が引き延ばされることで足関節捻挫の大半が生じます。
適切な外固定を短期間行い、同時にリハビリを早期から始めてゆくことで大半のかたは問題なくスポーツ復帰できる、最も頻度の高いスポーツ外傷のひとつです。

アキレス腱断裂

若年者ではなく中高齢の男性に多い外傷で、『誰かに後ろから蹴られたような感じだった』と表現される患者さんが多い外傷です。
手術療法、保存療法それぞれ長所・短所がありますが、早期診断が重要です。

スポーツ障害

スポーツ障害は、同じ動作を繰り返したり、使い過ぎたりすること(いわゆるオーバーユース)によって生じる病態の総称であり、ランナー膝 野球肩 野球肘 テニス肘 ジャンパー膝 アキレス腱炎 疲労骨折などが代表的です。
特に子供たちでは運動による負荷が体の成長に追い付かず、様々な病態を発症します。
運動を継続しておられるお子様が、明らかな外傷エピソードがないにも拘らず同一部位を痛がり続けるようでしたら念のため、早期の受診をお勧めします。

スポーツ障害の例

上腕骨外側(内側)上顆炎(テニス肘、野球肘など)

上腕骨外側上顆炎はテニス愛好家に頻発するため、一般にテニス肘と呼ばれてきました。
しかしながらこの疾患の原因は手関節の背屈を繰り返すことによる肘関節の筋肉・腱の炎症であり、テニスにおけるバックハンドストローク以外でも、同様の動きを繰りかえす各種目の選手に起こりうる病態であり、スポーツ選手以外にも起こりうるものです。
上腕骨外側上顆炎になると、物を掴んで持ち上げたりタオルを絞ったりする際に肘の外側から前腕にかけて痛みが走ります。
また、上腕骨内側上顆炎は、成長期にボールを投げ過ぎることによって起こります。
野球肘とも呼ばれており、投球時や投球後に痛みが走ります。肘の曲げ伸ばしが行いづらくなり、急に動かせなくなったりもします。
いずれの病態も早期診断ののち、適切な安静とリハビリを行うことで問題なく改善します。

離断性骨軟骨炎

軟骨が骨ごと剥がれてしまう病気であり、肘関節・膝関節によく見られます。
離断性骨軟骨炎になると、関節の軟骨が押されたときに強い痛みを生じるようになります。
野球の投球などによる肘関節への過剰な負荷などが原因であり、放置すると若年者でも変形性関節症に至ってしまうことも稀ではありません。
診断には一般的にMRIが用いられ、やはり早期診断が必要な病態です。

骨端症(シーバー病、オスグッド病など)

主にスポーツ活動で、過剰な外力が骨と筋のくっついた場所(いわゆる靭帯・腱の付着部)に繰り返しかかることにより生じる腱・骨端の炎症を指します。
例えばシーバー病はかかとの骨(踵骨)に発生する骨軟骨炎のことですが、踵の部分に炎症を起こしているため、運動時や運動後に踵部分に痛みを生じ、腫脹がみられることもあります。
小児期に出現することが多く、疾走を要する競技(例えばサッカーなど)や急激な踏み込み動作が多い競技(例えば剣道など)の選手に多くみられます。疼痛により満足なパフォーマンスが発揮できなくなります。
治療としては安静・リハビリによるストレッチや腱のリラクゼーション、特殊な装具でのサポート等の保存療法でほとんどの症例は改善します。
その他の例として、例えばオスグッド病は脛の骨(脛骨)とお皿の骨の間の靭帯(膝蓋靭帯)の付着部にジャンプ動作などにより繰り返し大きな外力がかかることにより生じる骨端症で、ジャンプ動作が多い競技(バスケットボールやバレーボールなど)に多く見られる骨端症です。
骨端症も長引けば病態は悪化する傾向があり、やはり早期診断・治療が重要となります。

腰椎分離症

腰の背骨(腰椎)は、ほかの背骨と同様に上下の骨が背中側で連結して関節(椎間関節)を形成しています。
頻回なジャンプ動作や、激しくストップ・アンド・ゴーを繰り返す種目ではこの腰骨同士の関節(椎間関節)にストレスが強くかかり続けるため、なかには椎間関節の近傍で骨にヒビが入ってしまうことがあります。
この場合、頑固な腰痛が長期間続くこととなりますが、放置しておくとやがてヒビは骨折へと進行してしまいます。このヒビや骨折のことを腰椎分離症といいます。
下位腰椎(第4、5腰椎)に多く、放置すると骨がなきわかれの状態となってしまいますが、超早期に発見できれば手術等を行わずにコルセット等での治療が可能となるため早期に発見・治療を開始することが大切です。
学童期スポーツ選手で1週間以上続く腰痛がある場合、早めに医療機関を受診し専門医の診察を受けるようにしましょう。

シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)

シンスプリントは脛骨の骨膜の炎症と考えられていますが、いまだ完全に病態が判明していない疾患です。症状としては脛の骨(脛骨)に沿ってうずくような鈍痛が起こります。
初期には運動時だけ痛みますが、ひどくなると歩くことも困難になってきます。
疾走型と跳躍型があり、主な原因は、アスファルトの上をランニングしたり、ダッシュを繰り返したり、足首を持ち上げる筋肉を過剰に使い過ぎたりすることなどです。
放置すると疲労骨折等、さらに病状は悪化する可能性があります。

疲労骨折

骨折は骨に過度の力が加わることなどで生じます。
健康的な骨では大きな力がかからない限り骨折することはないのですが、健康的な骨でも同じ場所に継続的に力が加わっていくと骨折してしまう場合があります。
代表例は前にお話しした腰椎分離症や、疾走を要する種目の脛や足の指で起こるものなどです。
レントゲンのみでは判然としないケースもありますので、CT検査やMRI検査を要することもあります。完全に折れてしまう前に診断をつけることが重要です。

スポーツ障害・外傷を予防するために

運動前にウォーミングアップ

運動前にウォーミングアップをしっかりと行うことによって、関節や筋肉の柔軟性が高まり、けがをしにくくなります。
きちんと準備体操から始め、柔軟性を高めるストレッチングも入念に行いましょう。
各種ストレッチ法につきましては当院 理学療法士にお気軽にお尋ねください。

オーバートレーニングは禁物

運動し過ぎはトレーニング効果を下げるだけでなく、疲労骨折などの原因にもなります。
運動の前後、あるいは運動中に苦痛を感じたり、体に力が入らなくなったような時には、運動強度を下げたり、休みを入れたりするようにしましょう。

運動後のクールダウン

運動をした後は、必ず疲労が溜まっています。また、運動による負荷や衝撃も体の各部分に残っています。
こうした疲労や負荷は、スポーツ障害の原因になります。そのため、クールダウンはスポーツ障害の予防に不可欠です。
運動前のウォーミングアップと同様に、運動後のクールダウンも忘れずに行いましょう。